日々是映画

『コーダ　あいのうた』

イタリア語でコーダは尻尾のこと。本作の主人公ルビー（エミリア・ジョーンズ）は家族の中でたった独り健聴者。漁業を営む父と兄も、家計を切盛りする母もろうあ者。家族が社会生活を送るためにルビーの通訳は欠かせないから尻尾のように家族に振り回される状況。家族と運命一蓮托生で私の人生これでいいのと思っていたところ、高校の合唱部へ参加してから芽生える将来の夢、恋愛などなど。この一見すると目新しくも何ともない物語がインクルーシヴな演出で感涙不可避の映画に。そのことを決定的にわからせてくれる終盤のある演出で映画館が静寂に包まれる瞬間が訪れます。その後ジョニ・ミッチェルの曲の中でも最高傑作と言われている「青春の光と影」で観客はノックアウトされるはず。こんなに音楽の使い方が優れているのは音楽プロデューサーが『ラ・ラ・ランド』：ニコライ・バクスターだからだけではない、プロダクションがフランス映画『エール！』をアメリカ・マサチューセッツの海沿い（バイ・ザ・シー）の街の話に置き換え、緻密なリアリティを創造してきた監督・脚本のシアン・へダーの功績です。そのへダー監督によれば「耳の聞こえない人の役があるのに、耳の聞こえない優秀な役者を起用しないというのは考えられなかった」と語っているようにフランク（トロイ・コッツァー）、ジャッキー（マーリー・マトリン）、レオ（ダニエル・デユラント）の3人を聴覚に障がいのある俳優が演じています。そういう製作姿勢から今の時代に大切な、誰も置き去りにしない映画です。

■タイトル：『コーダ　あいのうた』
■公開表記：2022年1月21日（金）　TOHOシネマズ 日比谷他、全国ロードショー！
■コピーライト： © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS　
■配給：ギャガGAGA

＜参考情報＞
■スタッフ・キャスト
監督・脚本：シアン・ヘダー　
出演：エミリア・ジョーンズ「ロック＆キー」、フェルディア・ウォルシュ＝ピーロ『シング・ストリート　未來へのうた』、マーリー・マトリン『愛は静けさの中に』
■基本情報：原題：CODA｜2021年｜アメリカ｜カラー｜ビスタ｜5.1ｃｈデジタル｜112分｜
公式HP：gaga.ne.jp/coda